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熊本地震の薬剤師の医療支援

2016年6月8日

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~モバイルファーマシーの活躍に見えた薬剤師の未来~

6月5日に昭和薬科大学にて行われた「第19回日本医薬品情報学会学術大会」のシンポジウム「災害医療と医薬品情報」にて、口演させていただきました。

当初は「災害に対応できる情報の収集と伝達(BCPを例に)」という演題でしたが、プログラムが完成してから4月14日に熊本が発災し、災害医療の報告を含めて発表内容を急きょ差し替えることになりました。

熊本も公的な医療支援体制は終了しました。現地の医療体制にシフトしたとはいえ、まだまだ混乱が続いている状況下、この時点で報告をしてよいかどうか迷いが生じておりましたが、今後の医療のため、また現地への息の長い支援を継続していくためには必要であると考えて実施することに決めました。以下は、口演の採録です。

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私がこの場で伝えたかったポイントは3点です。

  1. 避難所でのOTCの管理はどのように行われたのか?
  2. 避難所での医療相談や環境影響評価はどのような手順で行われたか?
  3. モバイルファーマシー(移動薬局)って何?どんな活躍をしたのか?

私が経験したのは5月10日から14日の南阿蘇地区での薬剤師業務で期間も限られていたので、総括的なことというよりは現地で自分が感じたことを中心にしました。

1.避難所でのOTCの管理はどのように行われたのか?

避難所でのOTC医薬品の配置

非常に難しい対応を要請されていたという印象です。当時は大量の支援物資の仕分け作業が途上で、十分な薬剤師を集積所に派遣することも出来ず、次に支援に入るチームに申し送りをしたのみでした。もし、支援物資がある程度仕分けされた状態でラベリングされ送られてきたのなら、もっと受援側の担当者が混乱せずスムーズに業務を行えた可能性があります。またOTCの使い方に関してもピクトグラム(図1)のようなものが添付されていれば、仕分けに専門家が張り付く必要もなくなったでしょう。

ピクトグラフ 出典:一般社団法人 くすりの適正使用協議会(図1)出典 一般社団法人 くすりの適正使用協議会

2.避難所での医療相談や環境影響評価はどのような手順で行われたか?

(図2)

避難所での健康管理に学校薬剤師としての知識、特にCO2濃度測定の知識が非常に役に立っておりました。一般的に建屋内のCO2濃度が1500ppmを超えないように喚起の指導を行うことが求められており、南阿蘇中学校体育館にて1日3回観測し報告、避難所運営者・他の医療スタッフから非常に感謝されておりました。

 

3.モバイルファーマシー(移動薬局)って何?どんな活躍をしたのか?

赤いベスト:広島県チーム 緑:埼玉県チーム 緑:和歌山県チーム

テレビや新聞で活躍が一番報じられたのが、この「モバイルファーマシー」と思われます。これは法律上の薬局ではなく「災害救援専門の車両」であり、中のシステムにて薬局とほぼ同じ調剤が可能になります。

 

 

医薬品の調剤棚を備えている
自動分包機があり小児の薬剤にも対応

薬剤師は、日本全国どの場所にいても標準化された仕事として、このモバイルファーマシーでの業務を行うことが可能です。これが他の医療職には無い強みであると感じています。
1日数十人分の日赤仮設診療所からの災害処方箋を受付け、お薬を交付することで被災地の皆様の健康をしっかり見守りました。日本で5台しかないこのモバイルファーマシーは、日赤の方や自衛隊の皆さんも関心をもって見学に来られました。

お陰様で南阿蘇に入った10名の仲間に支えられ、避難所薬剤師チームのリーダーとして次のチームにこれらの業務をなんとか引き継ぐことができました。
この絶妙なチームワークと、標準化された業務を真摯に行える職能は私たちの誇りでもあります。ここで集まったメンバーは皆地元に帰って素晴らしい仕事をされるのだなと想いを馳せることが、なによりも私の財産になりました。

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謝辞
急な内容変更で対応を頂いた座長の上村直樹先生、下平秀夫先生。またシンポジストの若林進先生、鹿村恵明先生、生出泉太郎先生に感謝申し上げます。
熊本の南阿蘇の災害薬事をコーディネートされて今も復興のため尽力されている稲葉一郎先生に心より御礼申し上げます。

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。