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平成28年熊本地震:悠翔会摂食サポート支援チームからの報告

2016年4月20日

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弊会の内宮歯科医師が現地で支援を行っていますが、先ほど最初の報告をいただきました。お役に立てばと思い、シェアします。
【総論】
●熊本地震摂食サポート支援チーム
【災害弱者のスペシャルニーズの口腔ケア,摂食嚥下サポートケア】
◯やっていること
・災害弱者でケア・食支援の不十分な方,誤嚥性肺炎になりそうな方のピックアップ
・その方への口腔ケア,摂食嚥下サポートケア
・なぜそれらが必要なのか啓発的普及活動(本人家族,避難所に関わる方々,マスコミ)
①口腔ケア,口腔機能維持
②水分・栄養摂取支援・指導(栄養剤,水分ゼリーを渡すなど)
③軽い運動・体操(身体機能低下の防止など)

【支援活動の実際】
・まずは避難所にいる人の中から虚弱、要介護者、肺炎になりそうな人のピックアップ
→ぐるーっと避難所を見回ってめぼしをつける。めぼしのつけ方は、高齢者、動かないで寝ている、痩せている、などのぱっと見です。
・困ったことないですか?と話しかけてその人の今置かれている環境や状態を把握する
→ひとりなのか家族がいるのか、ご飯食べているのか、トイレにいってるのか、からだ洗っているのか、などADLの把握も
・その後、医学的問診、食支援分野の問診など行い、口腔、栄養、運動の問題をその場にいる多職種メンバーで解決していく。
→現地ですでに支援に入っている玉名地域保健医療センター摂食嚥下栄養療法科の前田先生が呼びかけているメンバーは医師、歯科医師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士など様々ですが、上記問題を完璧に解決できなくてもある程度解決でき、他のメンバーにお願いしたり、引き継いだり、できる融通のきくひとでなければできないと思います。自分の専門分野はしっかり、それ以外をある程度知っているし行えるし、行えないと判断できて、判断したら他へ引き継ぐ。そういうスキルのある人がメンバーでないと、食支援はまったなしなのでなかなか難しいと。
歯科医師の内宮でいうと、もちろん口腔、嚥下の問題は得意だが、栄養・水分はある程度までしかわからない(問題の抽出はできるが、本当に支援がそれでいいのか迷ったら、現場のチームメンバーに栄養士がいたら栄養士にお願いして、いなければ、本部のメンバーに引き継げるようにする)運動もそんな感じです。
昨日は前田先生のところのトップの管理栄養士、摂食嚥下認定看護師で病院・老健・特養など色んなところで支援できる看護師、と歯科医師の内宮の3人のメンバーでした。前田先生からしっかりやってほしいとのことで、いちばん被災がひどく、要介護者高齢者が集まっている益城町総合体育館の避難所にわれわれ3人で2〜3時間支援しました。よくテレビにでている避難所です。

●課題
最初の、虚弱、要介護者、肺炎になりそうな人のピックアップを保健師さんなどがやってくれると、われわれ摂取サポート支援の実働部隊はそれ以外の実際の支援活動に集中できるのでいいのですが、現状ピックアップしてくれる人がいない。
→現状としては、そういう保健師さんを前田先生が見つけピックアップをお願いしている。赤十字などの医療班にわれわれの活動との連携をお願いしている。摂食サポートした方のご家族などに、おじいちゃん・おばあちゃんみたいに弱っている人がいたらわれわれを紹介してくださいとビラを、渡す。これが意外といい。自身被災しながらボランティアで入っている若くて元気な方に対して、少し手伝ってもらい、われわれの活動の意義・内容を話し、ビラを渡す。
→マスコミが多くいるので実際、摂食サポートしていると取材を受け、支援しているところを記事にしてもらう(朝日新聞社さんには書いてもらうことに)。
マスコミに対してアプローチしてわれわれの活動を啓蒙していくのも仕事のひとつですね。

【各論】
・口腔の問題
→義歯汚れのひどい人が多い。付けっ放し、もしくは慌てて出てきたので入れ歯がない人、歯磨きしたらいいとわかっているけど疲れててできない人、歯ブラシや義歯ブラシや義歯を入れるケースがない人、入れ歯が合わないという人、色々です。それを出来うる範囲で解決していきます。できなければ引き継ぐ。義歯汚れが水道で水をジャプジャプだして洗えないので中々取れなかったです。義歯ケースがまだ届いていないので義歯の保管方法への支援が、いまひとつできていない。
・栄養の問題
→配られるご飯は、炭水化物がかなり多いのでバランスよく食べられていない。タンパク質・ビタミンなど取れていない。栄養補助食品を渡したりしている。水分はおしっこいきたくないので飲まない人はやはり多い。飲みやすいですよと言って水分ゼリーを渡している。
もともとはソフト食を食べていたらしい人が避難所で出される常食を食べていたりなんとかおかゆだけにしているけど栄養とれていなかったり、
慌てて出てきたので入れ歯がないのでおかゆしか
食べていないひとなど、問題は、たくさんあります。
・運動の問題
→館内放送で「運動しましょう、外のテニスコートにお集まりください」と呼びかけるが、要介護者や虚弱高齢者は外に出られるわけがない。そこで簡単に足をあげたり、寝てばかりでなく少し起きてみたり家族や周りの人にお願いしてたまに起こしてもらうようにしたり、出来うる範囲で簡単な軽い運動をしてもらう。エコノミー症候群の予防の話をしたり、身体機能がおちると肺炎になりやすい話をしたりなど。
・継続観察
→食支援は一度では終わりではないので要注意の人を記録しておいて次の日も見に行く。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。