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卒業式

2016年3月4日

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先日、私の患者さんの一人が卒業式を迎えました。

重症心不全のため心移植適応となり、自分の心臓では生きていけない状態のため、昨年、補助人工心臓の植込み手術を行いました。

昨年はずっと入院でほとんど学校に行けず、その後も病状は厳しく、今日の卒業式の出席もできるかどうか…という状況でしたが、とっても頑張って先日退院し、先ほど無事に卒業式に出席できたとお母さんから聞きホッとしました。

本当におめでとう!!

卒業すれば、新しい出会いや新しい生活に、不安の中にも、希望や夢があります。しかし、この患者さんは今のところ病状を安定させて心移植を待つのみです。

「機械(補助人工心臓)がついて退院できたから、もう大丈夫なのね」と誤解している人がいると、お母さんが話していました。補助人工心臓は根本的な治療ではなく、あくまで心移植を待つ間の補助であり、補助とはいっても脳出血や脳梗塞、感染などの合併症のリスクが非常に高い状態、つまり常に「綱渡り」をしているような状態で心移植を待っているのと同じです。

常に機械に頼って生きている、機械が壊れたら死ぬかもしれない…
どれだけの不安か、私には計り知れません。
心移植を待つ…人の死を待つ…
どんなに複雑で辛い思いなのか、想像してもしきれません。

本当に素敵な家族の中で育った患者さんです。ご両親、ご兄弟はいつも本当に大切に見守ってくれています。今、この患者さんとご家族のために私ができることは、心移植までの期間、合併症なく無事に過ごせるようにすることです。しかし今の日本の現状では、約4年という長い期間がかかります。

「脳死」は滅多に起きることではないけれど、不幸なことで突然おこります。臓器移植をしたい意思と同様に、したくないという意思も尊重されるべきだと思っています。

私が伝えたいことは、万が一ではありますが身近で「脳死」になってしまった人がいた時に、こんな患者さんやご家族がいることを、少しだけ思い出して頂ければ…と思うのです。

立石実
東京女子医科大学 心臓血管外科
プロフィール
熊本大学医学部卒業。同年東京女子医科大学日本心臓血圧研究所心臓血管外科入局。中野佼成病院、聖隷浜松病院、富山県立中央病院、京都府立医科大学に出向。2009年~現職。専門医資格:心臓血管外科専門医、外科専門医、循環器専門医
著書
こどもの心臓病と手術