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28年度診療報酬改定:病院・医院と薬局とを隔てるもの

2016年2月10日

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~重要なのは物理的なフェンスではない~

規制改革会議で「利便性」という錦の御旗のもと議論が始まった、病院と薬局を隔てる公道・フェンスの必要性。先日厚生労働省から見解が出され、構造規制の一部見直しの通知が出されることになりました。

 

何故フェンスが必要なのか?

薬剤師による処方せんのチェック機能を果たしにくいということで、経営的なことはもちろんですが、医療機関と薬局をフェンスで仕切るなどし、公道にいったん出ないと行き来できない構造を一律に求めた規制を設けています。

 

患者・家族の高齢化に伴う通院上の問題の増加

この規制の元では、車いすや杖が必要な患者さんも、処方箋を持っていったん公道に出て近隣の薬局で薬の交付を受けなければなりません。薬局以外の施設にて薬剤を交付することは居宅管理(在宅)以外の方法は禁止されているので、不便でも行かなければならないのです。しかし、高齢者がこれからもどんどん増加すると見込まれる中、このスタイルがいずれ受け入れ難い状況になっていくことは明らかです。

今回の規制においても従来通り、建物内に薬局を誘致することや、屋根付の専用通路を設けて病院と薬局を結んだりすることは禁じられていますが、物理的フェンスについては患者の利便性を鑑み、取り除くことが可能となりました。

 

しかし、本質的な以下の問題はまったくの未解決です。

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保険薬局には処方せん上の医薬品のみ通知されており、
病院で行われた検査や病名などの情報は一切ない。
従って患者が答えてくれた情報以外は、
薬局の薬剤師は医師が診断したであろう病名を類推するしかない。

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現状、多くの薬剤師以外の方から「何でそういうことになっているんだ?」というお叱りをいただくことがありますが、そのほとんどの原因はこの、言わば「情報のフェンス」によるものです。この分断こそが、日本の医薬分業を残念な形式にしてしまっている元凶の一つではないかとさえ感じます。

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薬局にある薬剤服用歴の管理記録であるいわゆる「薬歴」ですが、
これも処方元にその情報がフィードバックされることなく蓄積されていること

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例えば、こちらも患者さんの同意があった上での話ですが、薬剤服用における体調変化や残薬数などが電子化された情報として処方元の医師に自動転送され、診療前に電子カルテ上に反映されるようなモデルが出来れば、よりスムーズな診療体制が確保出来ますね。

 

物理的なフェンスという議論だけではなく、このような情報の分断がもたらす患者不利益についてしっかり向き合っていかなければならないのではないでしょうか。

 

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。