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脳が、沸騰している

2016年2月4日

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佐久市中込地区の風景

佐久総合病院の北澤先生と国際医療福祉大学の堀田さんに地域づくりのヒントを探すための機会をいただきました。

最初にお邪魔したのは保健福祉大学の同窓会の健康文化斑の集まり。

「保健福祉大学」は佐久総合病院で毎年開催されている全8回構成の講義ですが、最大のポイントは「卒業生」たちが「同窓会」を形成し、地区ごと、機能ごとに活動を継続していることです。
今回は8名の卒業生が集まっておられましたが、それぞれが農協の施設や近所の空室などを活用して、地域の主に高齢者の方々が集える場を創っておられました。

「独居の高齢者が多い。一人暮らしでも最期まで地域で暮らせるような地域にしたい」
「いまは高齢者ばかりだけど、子育ての若いお母さんたちなんかと交流できる場にしたい、一緒にランチが食べられるような関係を創りたい」

毎回10人くらいしか集まらない、18人しか集まらない、なんておっしゃっていましたが、これって、すごいことですよね。
行政のスローガンではなく、主体的に活動している地域住民の口から、このような言葉が自然に出てくることに感動しました。そして、いまの自分たちの活動をまだまだ、と感じていらっしゃるということにさらに脱帽しました。
そして、健康福祉大学の卒業生はいまや1,000名を超えています。

次に衛生指導員として16年もの間、活躍されてこられた高見沢さんとお話をさせていただきました。

「衛生指導員」は地域住民のヘルスプロモーションを担当する地域の公職。自治体の首長によって任命されます。自ら健康管理に関する正しい知識を習得するために毎月の勉強会に参加しながら、それぞれが担当する地域の検診受診率のアップや、地域住民のリテラシー向上のための勉強会を企画・開催、必要な人を必要なサービスにつなげるなどの活動をしています。任期は4年間ですが、経験を重ねることで業務能力は当然アップしていくので、2期以上務めることが一般的とのこと。

高見沢さんは、地域の健康を改善するため、どうすればいいか、自分の頭で考えたそうです。

検診受診率をアップするため、担当する一軒一軒に問診票を配ったり、さまざまな組織(婦人会、地元野球チーム、呑み屋さん・・・)で検診の重要性を説明したり、病院や他の衛生指導員たちと「健康まつり」を企画して、検診や健康管理の重要性を理解してもらうための劇を上演したり。
結果として検診受診率は大きく向上し、病気の早期発見などにつながったケースもあったそうです。
医療専門職でない一般住民が、自主的に学習を重ね、このような責務を主体的に果たしてきたということに加え(会議費として提供される1000円以外は)時間も費用も自己負担だった、ということにさらに驚かされました。
衛生指導員の活動は町村合併や予算措置の影響もあり、実は昨年3月で一旦中止されているとのことですが、高見沢さんは、これは再開しなければならない活動である、と断言されていました。

いま日本各地で取り組み始めている試みを、この地域では数十年前から実践されていました。それをリードしたのは当時の佐久総合病院院長、若月俊一先生。
「種子をまく人になろう」をスローガンに、地域のヘルスプロモーションの担い手を育ててきたその先見性と強力なリーダーシップに、改めて畏敬の念を抱きました。

言いたいことだけ主張し自分たちは動かない、ある意味受益者意識の高い人々が増加する中、自らが動かなければという強い使命感を持った多数の市民の存在は、この地域の未来にとって何にも代えがたい資産だと感じました。

わずか4時間の滞在でしたが、脳ミソが沸騰しています。

Photo by Ignat Gorazd – Sunset in the Nakagomi

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。