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患者さんや家族の痛みは製薬会社では理解できないのか?

2015年9月2日

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[記事]製薬5社 重い副作用の46人を報告せず

10年前、私は製薬会社のMR職でした。

先輩MR「水君は副作用の報告件数は支店No1だけど営業成績は並だよね〜。そのDrとの関係をもっと生かす工夫をしたほうが良いんじゃないの?」

みず「あ〜、そうですね。でも製品の安全性を担当の先生方に本当にご理解頂かない状態では、まだ処方促進って難しいのですよ。」

そんな当時のMRの私に、個人的に医療相談をしてくれる友人Hがおりました。

H「誰にもまだ相談していないんだけど嫁が乳がんって言われちゃって・・・」

みず「ちょっと調べるからまた後で電話するからね・・・」

当時乳がんの製品知識も多少はありましたが、全体を網羅できるほどの知識には乏しく、かなり偏りがあったはず。でもHは私の話を真剣に聞いてくれ、報告してくれました。その後乳房温存手術から抗がん剤による副作用にも耐えて、セカンドオピニオンの受診にも同行しました。

私が当時彼女に言った、無責任な言葉。

「大丈夫。必ず良い方向にいくから自信をもってね!」

元気な彼女に再び会うことは、叶いませんでした。

その当時、製薬会社所属でなく医療機関の人間だとしても結果は同じだったかもしれません。しかし、自分の発する一言で何らかの関わりがある人の人生が変わってしまうかもしれない・・・という責任を強く感じたことを今でも覚えています。

前置きが長くなりましたが、製薬企業には医薬品医療機器等法(旧薬事法)68条の10に規定されているように、患者の死亡など重篤な副作用を知りえた時点から15日以内に厚生労働省に報告しなければならないとされています。医薬品の副作用の報告制度も当時から様変わりしており、医療者の報告の他、患者自身または家族からも副作用報告が出来るようになっております。

[参考]PMDA:患者の皆様からの副作用報告

この報告と企業報告または医療機関からの報告の明らかな齟齬が出た場合には、上記のような報告漏れとしてカウントされてしまうのでしょう。製薬企業のMRは担当エリア内の患者さんの命を守る番人であるはずですが、ここ数年様変わりしているように見受けられます。医療人としての倫理観は失われ、自社利益、自己利益の追求に走っているような感覚すら伝わってきています。

今こそ製薬企業には原点回帰で、医療に関わる仕事をしている自覚と倫理観を再構築して欲しい、と考えているのは私だけではないはずです。

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。