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いのちへの「想い」をつなぐ

2015年1月30日

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一緒に子供の心臓病の診療にあたっている東京女子医大病院 循環器小児科 教授の中西敏雄先生。
中西先生が病院のある新宿区の小学校で数年前から行なっている「いのちの授業」を、先日一部で取り上げていただいたようです。

(参考)「命ってなんだろう」「遺体に触れた経験ありますか」 医師が子供たちに続ける「いのちの授業」

この記事の中にもあるように臓器提供の賛否は半々、価値観は人それぞれで、家族の中でも意見が分かれることもあると思います。
何かきっかけでもなければ「生きていることが当たり前」だと思ってしまうのは当然です。

それにあと何十年か待てば再生医療で心臓が作れるかもしれませんし、もっといい治療法が発見されるかもしれません。
そしてその時には「昔って他の人の臓器を移植してたんだって!」と、移植医療が昔やっていたトンデモ医療と思われる日が来るのかも…
よりよい医療を、より多くの人に提供できるように日々努力するのは、当然医療者や関連研究職の仕事ですし、きっとそんな日が来ることを私も願います。

しかし、残念ながら現時点では「移植」しか治療手段がない疾患が多くあり、
そして、その移植を待つ間に亡くなっていく方がいらっしゃるのです。

(参考)脳死の女児 緊急時の人工心臓やむなく長期使用

悔しく、悲しく、やるせないですが、それが厳然たる事実です。
医療者は常に、その時点でできる最善最良の医療技術を投入し全力を挙げるのが責務ですが、
しかしそれだけでなく、このような医療の現状について知ってもらうこと、
そして命について少しだけ考えてもらうことも、当事者として必要だと感じています。
そんな思いから、中西先生は授業を続けてらっしゃいます。

もちろん一番尊重しなければならないのは本人と家族の意思であり、
私たち医師や医療者が押しつけるものでは絶対にありません。

ただ、もし…万が一、ご家族が「脳死」と判定された時。
「もはや移植以外に治療法がない」という方がいて、その方の中で、ご家族の命がたとえ一部でも生き続けられるなら。
生きたいと願う人の想いと、生きて欲しいと願う家族の想いが、つながることを祈りたいと思います。
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以下は、みなさんでぜひお時間あれば考えていただきたく思い、公表されている統計データなど紹介致します。

◎日本臓器移植ネットワークが、Webサイトで公開している移植数の集計や昨年に発表した統計によると

○脳死下の臓器提供は、改正以前の年間10人以下に対し、40人以上にまで増加
○臓器移植法改正後認められた15歳未満からの脳死下の臓器提供は、これまで7人にとどまっている
○家族承諾による提供は全体の3/4を占める

(参考)日本臓器移植ネットワーク | 移植に関するデータ
(参考)日本臓器移植ネットワーク NewsLetter Vol.18(PDF)

◎平成22年の臓器移植法改正後、平成25年に行なわれた内閣府の調査によると

○本人が脳死下提供の意思表示をしていた場合、「尊重する」「たぶん尊重する」と回答した割合は87%
○本人が脳死下提供の意思表示をしていなかった場合、家族が臓器提供を承諾する割合は12.4%
(参考)臓器移植に関する世論調査 – 内閣府

 

立石実
東京女子医科大学 心臓血管外科
プロフィール
熊本大学医学部卒業。同年東京女子医科大学日本心臓血圧研究所心臓血管外科入局。中野佼成病院、聖隷浜松病院、富山県立中央病院、京都府立医科大学に出向。2009年~現職。専門医資格:心臓血管外科専門医、外科専門医、循環器専門医
著書
こどもの心臓病と手術