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提言:お薬手帳の「誤解」を解くために医療者ができること

2014年11月28日

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4月以降、お薬手帳に関する議論がたびたび盛り上がっています。
議論のきっかけは、「お薬手帳にはお金がかかっていたのか」という、医療者にとっては灯台下暗しのような一般の方の話からでした。
最近でもこの点だけに注目した、ある意味残念な意見が広まっています。

どうして電子化しないのか?おくすり手帳の謎

今回は薬剤師のコラムニストの方に、「誤解」の原因と、一般の方に意義を感じていただくために何をしたらよいか、聞いてみました。

 

▽なぜ「誤解」が生じるのか

編集部:4月以降、薬剤服用歴管理指導料の適用要件厳格化のあと、「お薬手帳を断って20円節約しよう」という話が出てきました。

水八寿裕氏(薬剤師、以下水氏)ここは完全に誤解なのですが、処方薬の情報をシール等で渡すだけが要件ではない。ちゃんと飲み合わせのチェックをして安全性を確認したり、ジェネリックの希望があれば同等のものを検討してコストのことも提案する。そういった、一連の患者さんに最適な薬剤を交付した行為の「証明」のためのお金のはずなんです。

會田麻理氏(薬剤師、以下會田氏):当事者なのに他人事みたいで恐縮ですが、一部の残念な薬局は本当にシールを渡すだけ、下手すればこの最初のブログの方が体験されたように、何も言われずに勝手にお薬手帳が発行されるようなことも聞きますね。

水氏:正直言ってそういうのは風上にもおけない。腹が立ちます。患者さんが折角持ってきていただいた手帳をほとんど確認しない薬剤師も同じですね。

編集部:一般の方はそういうことを体験すると「そんな無意味なことにお金を払えるか。紙で記録するのが出費の根拠なら、拒否すればいい」と、なるんでしょうね。

會田氏:水さんが仰ったように、そもそも紙で情報を記録する費用じゃないですし、私たちが確実に役割を果たしていれば意義は感じていただけるんですけどね。

水氏:その役割というのが、なかなか実感を伴って理解していただけるかというと、分かりにくいかもしれない。もっともっとネットでもリアルでも発信するべきなんでしょうね。私たち自身が。

編集部:そもそも論で申し訳ないのですが、「医薬分業」のメリットがあまり理解されてないのかもしれませんね。

水氏:確かに、いまだに医療業界ではない人には聞かれることがあります。「病院行ってまた薬局行って、二度手間だ」って。

會田氏:確かに二度手間といえばそうですが(笑)水さんはそういう質問されると、どうお答えしてます?

水氏:いくつか病院にかかっていて、そのたびにその場で薬を別々にもらっていたら同じ成分のお薬も中にある可能性があります、で、同じ役割の薬をぜんぶ飲んだら大変なことになる可能性があります、と言いますね。

會田氏:まさにそこなんですが、いまそういう状態の方、つまり高齢者の方は理解してくださることも多いですが、そうでない方、例えば若い方の反応ってどうですか?

水氏:頭では理解してくれます。が、そういう方は実際はお薬手帳をよく忘れますね(笑)。若い方は滅多に病院にかからないので、お薬が「だぶつく」状態にもなりづらい。自分で管理できるくらいの量と種類だから大丈夫と感じるようです。

會田氏:そういうケースも確かにあるでしょうし、本当にふだん病気なんてしませんから、とおっしゃる方も多いですね。

水氏:そう感じる若い方は、個人でも発信がしやすいWebメディアにもよく親しんでらっしゃいますから、ブログやSNSで「手帳なんかいらないのに」という意見を上げていくんですね。「お薬の管理」の話が、そこでだんだん「お薬手帳はただの記録だから要らないよね」という話にすり替わって、若い人の間でコンセンサスになりかかっているというのが現状なのかも知れません。

會田氏:でも誰が見てもわかるような形で記録がないと管理ができませんよね。何を処方されているのか分からないと、それに対して適切なチェックができない。

水氏:だから、きっとお薬の「だぶつき」や「飲み合わせ」による健康被害を防ぐ以外のメリットをより具体的に示していくことが必要なんだと思います。

▽薬剤師にお薬のことを任せるメリット、をどう伝えるか

編集部:単体の調剤薬局かドラッグストア併設なのかで多少違うかもしれませんが、処方箋のお薬以外のことや、単に自分の体調、アレルギーのことなど、ふつうに相談してもいいんだ、というのも理解されてないのかもしれませんね。

會田氏:ちょっと頭が痛くてドラッグストアで頭痛薬を買っていて、で全然別に風邪を引いたと思ってクリニックに行き、処方を受けて・・・というようなケースは、私たちが市販薬の販売名から調べて痛み止めの成分などをチェックする必要があります。

水氏:頭痛の話ですと、自分で一般薬をよく買っているという話を聞いたらもっと症状を聞きますし、場合によってはすぐ病院行ってくださいと話すケースもあります。それこそが単なる記録にとどまらない「管理」ですし、そのためにお薬手帳が必ず必要なんです。

會田氏:処方箋の薬以外のことでも、お気軽にご相談いただければ、お渡しする薬を選択するための判断材料になりますよね。頭痛の話でなくても、効かなかった、合わなかった薬の話などはぜひお聞きしておきたいことです。

水氏:それによって処方するお薬が変わるということは、実際にあり得ますからね。

會田氏:お話好きなおじいちゃんおばあちゃんは、いい意味でよく話してくれるから、結果的に相談になっているという部分もあるんでしょうか(笑)若い人は、まず「薬局は薬を受け取るところで、相談するところではない」みたいなイメージがあるのかも。

水氏:それは確かにそうかもしれません。それから、そういうことは極めてプライベートなことだから話したくない、という気持ちも理解できます。

會田氏:そういうことも、お薬手帳に書いていただけたらいいんですよね。話さなくても伝わりますし。というか、お薬手帳はその時の症状や、日頃の血圧とか体調などをメモしておくと便利ですよ、とお話しすると、そういうふうに使っていいんですか?とびっくりされる方もいらっしゃる。気になることはなんでも書いていただいていいですし、そのほうが何度も話す手間も省けますよね。それに、先生に聞き忘れた!ということもなくなります。

編集部:その若い方が持っているであろう懸念、最初のブログの方もそうでしたが、お薬の費用対効果についてはどうですか?

水氏:確かに処方箋をもらう機会が少ない方、つまり通院が少ない方は、お薬手帳自体を「要らない」と言ってしまう選択肢もありますよ。それで少しコスト削減になることは否定しません。でも持病があったりで、常にお薬の処方を受ける方や、複数の病気をお持ちでそれぞれお薬が必要な方は、絶対にお薬手帳をお持ちいただいたほうがいいです。

會田氏:薬剤師はその情報を元に、その方の体質や薬歴、ジェネリック希望の有無などお聞きして、その方にとって安全で、コストパフォーマンスもいいお薬の調剤を行ないます。2014年4月の診療報酬改定から、規則上は「そうしなくてはならない」のです。ですから最初に出てきたような、何も聞かず、何の説明もせず勝手にお薬手帳を作って、無言で渡してくるような薬局には遠慮なく「NO」を突きつけていただいて、ぜひ次から違う薬局へ行ってください(笑)

編集部:「お薬手帳は要らない」といえば自分の払うコストが下がるから関係ないや、ではそういう薬局を結果的に許すことになりますものね。

水氏:そうですね。医薬分業で、かつ薬局が複数存在するメリットは、利用者が良質なサービスや相性の良い信頼できる薬剤師を選べる、ということですから。

會田氏:別に徒党を組んで、薬剤師や薬局全体で紙のお薬手帳の発行に執着しているわけではありません。お薬手帳を服薬管理、健康管理のきっかけとして、わたしたちを使っていただいて、そして取捨選択して「お気に入り薬剤師」を選んでいいんですよ、ということなんです。前回お話しした薬剤師ともう一度話したい、とご指名していただいてもけっこうです(笑)。安心してお薬が飲めるようにお手伝いするのが、私たちの仕事ですから。

編集部:調剤業務の意義だけでなく薬剤師を役立てることの意義、これをもっと一般の方に伝えていく努力が必要ということですね。今日はありがとうございました。