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薬剤師目線で解説する、危険ドラッグが危険な理由

2014年8月29日

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本年4月より法律での規制が厳しくなった危険ドラッグですが、その使用により無関係な人を巻き込む残念な事件が多発しています。その問題点をともに考えていきましょう。

という私、実は大学~大学院の3年間は有機合成化学の研究者でした。所属研究室の教授は『構造活性相関』という言葉を薬学の世界に導入した人でもあったので、「デザイナーズドラッグ(=危険ドラッグ)」の化合物を創り出す基礎技術基盤は実は同じであることを感じています。そんな元研究者としてのいち見解なのですが、この危険な薬物を理解するきっかけ、または医療関係者が一般の人に危険性を説明する参考としてお付き合いください。Q&A形式にしてみました。

 

Q1)どうやって検査・検出する?

・覚醒剤や大麻は毛髪や尿などから検出でき、使用者の検査方法が確立している。

・危険ドラッグは大麻・指定薬物などの化学成分の基本構造に類似しているものの、従来の薬物検出法では確認が難しい構造へ化学合成して作られている(脱法という名称の由来)

Q2)入手方法は?

・覚醒剤や大麻は少数で管理されたルートを経由しており一般人には入手は難しい。

・危険ドラッグはハーブショップと称した店舗で販売されていることが多い。一部では自動販売機というケースも。つまり遥かに容易に入手できる状態である。

Q3)作用の違いは?

・覚醒剤や大麻は効果には個人差はあるものの興奮や幻覚などをもたらす。精神的な依存も形成される。しかし、使用に関しての知見はある程度蓄積されている。

・  危険ドラッグは人体への毒性や安全性の情報がなく、医療関係者の対応が、違法のドラッグに対するそれよりも難しいケースさえ考えられる。使用方法によっては生命の危険が生じる。知見は、おもに使用者による使用感覚の口コミが、クローズドなコミュニティで共有されているに過ぎない。

・作用の薬学的根拠

ナフトイルインドール骨格

     ナフトイルインドール骨格

大麻の主な成分のカンナビノイドは窒素原子を含まず、炭素、酸素、水素原子で構成されるものであったが、上記のナフトイルインドール骨格を含む化合物は合成が容易でしかも安価に入手できることから、最近の危険ドラッグの主流となってしまっている。

Q4)取り締まりの根拠法令は?

・薬事法第二条第十四項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令の一部を改正する省令(平成26年厚生労働省令第79号)

Q5)法令違反をするとどうなる?

・厚生労働大臣は、中枢神経系への作用を有する蓋然性が高く、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれのある物を「指定薬物」として指定する(薬事法第2条第14項)。指定薬物は、製造、輸入、所持、使用等が禁止されている(罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金。業としての場合は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)

 

今後の対策ですが、警察関係者はもちろんのこと、もし医療関係者が関われるならば

1)危険ドラッグの検出方法の早期確立
2)違法性の周知と低学年児からのおくすり教育の徹底
3)薬物依存者の社会復帰支援の充実

というところでしょうか。

医薬品を生業としている私たちにとって、未知の化学成分の摂取の怖さは身に染みています。このような違法薬物問題は他人事として放置せず、地域から加罪者・被害者を出さないためにも取り組んでいきたいと考えています。

 

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参考)

7月25日に新たに指定薬物にされた成分

[物質1] 省令名:N-(1-アミノ-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-1-(シクロヘキシルメチル)-1H-インダゾ-ル-3-カルボキサミド

通称名:AB-CHMINACA

 

CHMINAKA

[物質2] 省令名:メチル=2-[1-(5-フルオロペンチル)-1H-インダゾ-ル-3-カルボキサミド]-3-メチルブタノアート

通称名:5-Fluoro-AMB

 

 

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000051227.html

 

あやしい薬物連絡ネット

http://www.yakubutsu.com/scheduleddrug/context/sc.html

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。