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看護倫理は「看護師の倫理」ではない

2014年6月27日

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最近、看護倫理について執筆依頼をいただき、一節書かせていただきました。まもなく発売になります。

[書籍]看護倫理 実践事例46

それ自身は私の専門分野における症例を題材にしたものですが、この機会に思うことがありましたので書いてみます。

不遜ながらクリニックを経営しておりますと、患者さんの対応(これがほぼイコール臨床倫理、看護倫理になってくる)の責任は、当然ながら院長の私にかかってきます。
医師としての私だけでなく、スタッフとして来てくれている同僚医師、看護師、その他スタッフの対応も気にかけなければなりません。
当たり前ですが患者さんにとっては、誰の対応でも「医院の対応」であり、医師だから、看護師だから、そのとき勤務していなかったから、という当事者の都合など一切関係ありません。

とはいうものの、こうした患者さんの対応に関して職種間での共通理解がなかなかうまくいかない、というのはちらほら耳にします。その原因は単なるディスコミュニケーションや、職種間でのセクショナリズムであったり、とさまざまですが、それらの障害を越えるために私が大切だと思うのは、関わる全員が同じ方向を向いて仕事をしているかどうかだと思っています。医療の場合は、それが「患者さん」であり、それぞれの職種による関わり方や捉え方が異なるにせよ、「患者さん」が笑顔になるにはどうしたらいいのか?という共通点に向かって、自分のやるべき事をちゃんと考えることではないでしょうか?
自分たちの職務による状況の違いなど、気にしていたら始まりません(違うのが当たり前ですから・・・)。患者さんにその人のベストな診療を行うこと、これに意識を集中することが、倫理面の質を維持することにも繋がります。ここは看護師さんのやることだから、ここは先生がすることだから、と分けずに、担当の患者さん(症例と言い換えてもいいですね)のために知るべきことはできるだけ共有する、という「意識を共有」することが大事になってきます。

私たちのクリニックでは、医師も受付も看護師も、スタッフ全員がインカムをつけて仕事をしています。結婚式場や大きな居酒屋、イベント会場の警備スタッフなどが耳にイヤホンをかけて、小さなマイクで話をしてる姿を最近よくみかけますが、あれです。インカムは携帯やトランシーバーなどとは違って、1人が話したことが全員に聞こえるようになっています。従って、クリニックの誰かが発した情報は瞬時にクリニック内全員の耳に届くため、患者さんの情報や院内の行動すべてを全員が常に共有しているのです。この導入によって、誰かの思い込みやうっかりミスなども激減、患者さんも自分が目の前のスタッフに伝えた内容が時と場合によっては、全員が知っている状況になるため、とてもスムーズに事がすすんでいきます。患者さんの医療的な内容も看護師だけが、医師だけが知っていればいいものではなく、患者さんに関わるスタッフ全員が知っている事で、全員がどうしたらいいのかを考えられる状態にいるのです。

今回は、一義的には看護倫理の話ですが、看護師がやるべきことという意味ではなく、その症例に関し共有すべき知見ということで書かせていただきました。参考になれば嬉しいです。

余談ですが、常日頃、理事長・院長という立場から、経営者としてはスタッフさんにそうした意識を保ち、集中してもらえるような環境を用意することも大切だと考えています。単純に勤務環境が辛いと、彼らも愚痴をこぼしたくなりますし、ストレスから仕事に支障がでてしまう、ということもなきにしもあらずです。そんなことにならないようにするにはどうしたらいいのか、など学ぶべき事がいつも一杯で減ることがありません・・・なのに気がつくと、今日もどこかでなみなみとワインを1杯注いでもらっている自分がいます(あ、愚痴こぼしてしまった、、、?)

宗田 聡
産婦人科医
プロフィール
茨城県出身。医師、医学博士。専門は、産婦人科医(周産期医療、出生前診断、胎児医学、遺伝医学、メンタルヘルス、医療倫理、プライマリケア、医療IT、女性医学)。日本産科婦人科学会認定医・指導医、臨床遺伝学認定医・指導医、認定産業医・スポーツ医、アメリカ人類遺伝学会(ACMG)上級会員(Fellow)
 母校の大学病院で講師として臨床医療・教育・研究に関わり、留学後に幅広い医療、特に女性の心とカラダの健康を総合的にサポートする医療を理想として、地域周産期センター長を歴任後、都内で都市型かかりつけ医のクリニックを開業。
 日英論文多数、専門書(翻訳)執筆にも定評があり、一般誌でも「Anecan」など様々な雑誌で女性の健康に関する記事を多数執筆。著書には、「産後ママの心と体をケアする本」「産後うつ病ガイドブック」「ニューイングランド周産期マニュアル第二版」など。