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選べる自由とレコメンド

2014年4月24日

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レコメンドエンジンという言葉をご存じでしょうか。アマゾンなんかで、デジカメを購入すると、「この商品を買った人はこの商品も・・・」とメモリーカードや、予備のバッテリーをすすめてくれます。このような仕組みをレコメンドエンジンというシステムが担っているそうです。気の利いた仕組みですよね。

場面が変わって医療現場においてはインフォームドコンセントが丁寧に行われるようになっています。医師は「がんの治療にA・B・Cの方法がありますが、どれにしますか?」と患者さんの意向を聞きます。一見すると丁寧なことかもしれませんが、どんな結果が待つのか想像し難い患者さんや家族は自信をもって選べるでしょうか。

実はここにこそ医療従事者のレコメンド(提案)が必要だと思うのです。特に看護師によるレコメンドはエキスパートでない限りは難しいでしょう。看護師さんは二言目には「それは先生に聞いてください。」と言うことしかできません。「私はAが妥当だと思いますよ。」だなんてことは言えない時代になってしまったのです。医師の発言と看護師の発言が食い違ってはいけませんから。なぜかというと、訴訟に負けてしまうからです。

そういった事情から、病院で看護師が仕事をするときに看護師によるレコメンドをグッと飲み込む場面が少なくありません。そのレコメンド内容の中身は別としても、「ベストを尽くせていないのではないか・・・」というフラストレーションが看護師自身に溜まるものです。そして、そのような提案を聞くことができないまま、患者さんは不安を抱えたまま決断を迫られるわけです。

そうやって考えると、それぞれの立場で誰も報われていないことに気づきますよね。ペイシェントアドボケートなど様々な角度から患者さんと医療従事者の溝を埋める取組みがなされていますが、まずあるべきものは、基本的な信頼関係ではないでしょうか。

今や「お医者様は偉い」「大病院に行けば治せる」というような漠然とした、かつてあった社会的な信頼感は崩れてしまっているのかもしれません。しかし、そもそも良くしたい人と良くなりたい人という意味においては、その場の関係性としての信頼関係は双方の立場の理解によって築けるのではないでしょうか。コロンビア白熱塾で有名なシーナ・アイエンガーは著書で、選べる結婚でも幸せになるとは限らないし、選べない結婚でも幸せになることができることを伝えています。選べることが重要な場面もありますが、選べない中でも受け止め方によっては幸せになることも多いようです。

日本の医療現場で選択の上に、信頼関係によるレコメンドが加わると一つ深みが増すように思えませんか。

 

photo by julien haler

賢見 卓也
看護師
プロフィール
兵庫県立看護大学卒業。日本大学大学院グローバルビジネス研究科卒業。看護師。MBA。 訪問看護パリアン 在宅ホスピス看護師。株式会社トロップス 代表取締役。NPO法人がんと暮らしを考える会 理事長。

医療法人社団パリアン http://www.pallium.co.jp/
株式会社トロップス http://www.troppus.co.jp/
NPO法人がんと暮らしを考える会 http://www.gankura.org/