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調剤報酬改定に思う

2014年2月21日

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先頃、4月の調剤報酬改定の点数が公表されました。医科・歯科の報酬改定と同じく、この時期私たちにとってはある意味死活問題にもなるものです。いま、現場はどのように感じているかご報告したいと思います。

大きなポイントは3つです。

■患者さんがお薬手帳を持参しなかった場合、薬歴管理料 マイナス7点

お薬手帳の意義、メリットを十分に説明しなかった一部の残念な方々がいたようですね。今回のこの減点は、そういう方々に対する大きな警鐘です。患者さんにきちんと啓蒙していかないと、「手帳があるだけ10円~20円高くつく」わけですから、持ってきていただけるはずがありません。個人的には非常に悔しく思っていますが、手帳のメリットは議論を待たないところですので、引き続き歯を食いしばって良さを伝える努力をするしかありません。

■在宅訪問について、算定対象が薬剤師1人当たり1日5人までに制限

これに関しては正直言って、悔しい以上の憤りを覚えています。なぜならどう好意的に見ても、国の支出削減のために実情をあえて無視しているとしか思えないからです。ケースは多くないかもしれませんが、1日5人以上訪問している場合も現実あります。その事情を鑑みずに一律カットというのはミスリードとしか言いようがありません。国は、台所事情が苦しいから私たちにただ働きせよとでも言いたいのでしょうか。

とはいえ、このような裁定になった事情も分からなくはないのです。あえて大人数の施設を選んで、ろくに管理指導もせず「荒稼ぎ」している薬局があることは否定できない事実ですし、おそらくその対策ということなのでしょう。
ただ指摘したいのは、そうしているのは「薬局」であって、薬剤師個々人と必ずしも紐づいているわけではありませんので、これが適切な対策かといえば絶対にそうではないということです。高齢者の施設が少ない地方で、居宅患者を中心に頑張って訪問している同志のモチベーションを下げはしないかと、本当に危惧しています。

■基準調剤加算引き上げられるも、適用基準厳しく実質マイナス?

調剤加算ですが、4月から、1は12点、2は36点に引き上げられます。しかし、適用基準が、基本的に「受付回数2500/月超かつ集中率90%超」で、「24時間調剤と在宅業務の整備」がされていなければ適用できません。これは相当に厳しい基準となっています。つまり、引き上げ対象が大幅に絞られていると言っても過言ではないのです。

○「とにかくキャップをかける」視点からの脱却を

以前から皆さん感じていることだと思いますが、調剤報酬、診療報酬ともに「実情はともかく、支出をおさえるために大口支出にキャップをかける」という思惑しか見えてこないのはなぜなのでしょうか。病院から在宅への転換、医薬分離で医療安全と患者さんの選択肢の確保をはかるというのは、政府自身が長年提唱しているロードマップのはずですし、大枠としてはその通りに医療リソースの再編が進んでいます(速度と精度に難がある、ということは確実にありますが)。現場の当事者のほとんどはそのロードマップを理解し、よりよい実現のために努力しています。現場の実情をあまり考慮せずに一部の残念な方の基準に全体を合わせる意思決定は、単にモチベーションを下げるだけで何の効果もないので、本当にやめてもらいたいと切に思います。またこの報酬が適切かどうかを人任せにせず、自分たちで資料を作り上げていく必要性を強く感じます。

その上で私たちも、生活がありますので収支の話は完全に吹っ切ることはできないかもしれませんが、「患者さんに選ばれ、支持され、かかりつけ薬局・薬剤師にしていただくために何をしたらよいか」を経営の真ん中に置いて努力することが、結局は近道であることを再認識するべきなのでしょう。

photo by m.wriston

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。

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