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子どもを持つということ(2)卵子「老化」に対する処方箋は

2013年1月24日

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前回は入り口のところを考えてみましたが、今回はその次のステップについて考えてみたいと思います。

昨年から、卵子の「老化」についての理解が広まってきました。高齢での妊娠に立ちはだかる大きな壁のひとつとして、この老化があります。卵子を排出する卵母細胞の数は、実は胎児の頃がもっとも多く、決して増えることはありません。そしてその頃からずっと存在し続けているわけですから、年齢を経るにつれ、母体と同じように老化していくわけです。高齢になればなるほど、受精する可能性は低くなってくるのです。

ご自身の卵子での妊娠が自然、かつ理想なのは言うまでもありません。しかし残念ながらその望みを絶たれてしまった女性が、それでもなお産みたいと考えたとき、次善のやむ終えざる策として、卵子提供を受けるという選択肢が科学の進歩によってテーブルに上ってきました。

海外では、そういった方々に関するソリューションが整備されつつあります。ドナー登録を行う機関、レシピエントとして登録する機関それぞれにきちんとあり、医療としての安全性を担保しながら卵子提供を受けるシステムを作ろうとしています。
ところが、日本国内においてはまったくといっていいほど、何もなされていません。さまざまな事情があり、法的に言うところの「生殖補助医療」に関しては、法整備するという方針だけが示されたまま、10年以上も国会で審議すらなされない「棚ざらし」の状態におかれています。

国内で卵子提供を受けられないのですから、では海外で…という方が出てくるのはグローバルな現代として当然の流れです。先日NHKで報道がされましたが、アメリカやタイで高額な費用を払い、渡航して卵子の提供を受ける女性が多数に上っているとのことでした。厚生労働省の統計から推計すれば、出生1万人に対し2.7人が卵子提供によるもの、という話ですから、出生数全体に対しては数百人ということになります。

参考:NHKクローズアップ現代『急増 卵子提供』

卵子提供を受けたいという日本人の方が、渡航し大変なリスクを冒して(医学的なことだけではなく、仕事を休むなど社会的リスクも含めて)、第三者の卵子によってこどもを産む。もちろん、国内で提供を受けられないということが分かった上での自己責任の行動ですし、一方でそれに対応できる技術や提供している会社があるわけですから、ある意味単なる需要と供給の話なんだ、と言えないこともない。だから何も問題ないじゃないか、という見方もあるでしょう。

しかし、果たしてそうなのでしょうか。
個人の夢や希望は、何の規制もなく叶えられる、叶うものなのでしょうか。
人の身体や考え、そして置かれている環境は様々です。
全員が全員とも同じ夢を果たせることはありません。

一方で、病気により自分の卵子で妊娠できないケースについて、国内でおそらく唯一だと思いますが、ドナー登録(必要経費以外無償)を行いマッチングするNPOができました。先日登録募集をはじめたところ大きな反響があったとのことです。

参考:提供卵子の仲介団体、初日だけで41人申し込み

たとえパートナーの遺伝子ではなくても、それでも自分の子どもを産みたい、という声。
そしてそれに応えたい、という声。確実に、それは大きなうねりとして存在します。

しかし、すべてのことがそうですが、最初は「個人」の問題であったことが知らない間に「社会」のルールや常識になってしまうことも少なくありません。
この卵子提供の問題は、もっともっといろいろな分野や立場の方と徹底的に議論して、みんなでよーく考えなければならないのではないでしょうか。

違和感を感じているのは、へそ曲がりな私だけなのでしょうか?

宗田 聡
産婦人科医
プロフィール
茨城県出身。医師、医学博士。専門は、産婦人科医(周産期医療、出生前診断、胎児医学、遺伝医学、メンタルヘルス、医療倫理、プライマリケア、医療IT、女性医学)。日本産科婦人科学会認定医・指導医、臨床遺伝学認定医・指導医、認定産業医・スポーツ医、アメリカ人類遺伝学会(ACMG)上級会員(Fellow)
 母校の大学病院で講師として臨床医療・教育・研究に関わり、留学後に幅広い医療、特に女性の心とカラダの健康を総合的にサポートする医療を理想として、地域周産期センター長を歴任後、都内で都市型かかりつけ医のクリニックを開業。
 日英論文多数、専門書(翻訳)執筆にも定評があり、一般誌でも「Anecan」など様々な雑誌で女性の健康に関する記事を多数執筆。著書には、「産後ママの心と体をケアする本」「産後うつ病ガイドブック」「ニューイングランド周産期マニュアル第二版」など。