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育児は育自

2012年10月4日

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「育児は育自」

時々見かける言葉ですが、子育てをしていると「ホントにそうだなぁ」と日々しみじみ納得いたします。

いつも「先生、先生」と呼ばれていると、大してエラくもないのにエラくなったような気分になっている訳ですが、母親になったら当然ながら「立石さん」とか「○○ちゃんママ」と呼ばれ、保育園などに電話する時には「立石○○の母ですが…」と名乗ります。保育園の先生にとっては「初めて子供を育てる、ちょっと忙しそうな(笑)お母さん」に過ぎず、子供のことに関しては、保育園の先生に教わることだらけでした。エラくなったような気分になっているのも、何でも知っているつもりになっているのも、実は大いなる勘違いであることに気付かされました。

自分の子供が高熱を出したり、吐いたり、苦しそうだったり、あたまをぶつけたりすると、医師として診察するんだったら「そんなことぐらいで…」と思うことが、自分の子供になるとものすごく心配になってしまいます。「これぐらいなら病院に行かなくていいだろう」と医師として判断する自分と、「ホントに大丈夫かなぁ」と母親として考える自分が、葛藤してしまいます。私は普段、先天性心疾患を扱っているので、「ちょっとのことでこんなに心配になるのに、ましてや子供に心臓病があったら…先天性心疾患の子供達のご両親やご家族は一体どれだけ不安だろうか…」と育児を経験する以前にはあまり想像できなかったことが、少し想像できるようになりました。「その不安が少しでも解消されれば」と思い、産休中から先天性心疾患のおもに一般の人向けの解説書を書きはじめ、 出版いたしました(手前味噌で申し訳ありません)。

こどもの心臓病と手術―不安なパパ・ママにイラストでやさしく解説/患者説明にそのまま使える

この本を執筆するきっかけを作ってくれたのは、自分の育児経験のおかげです。

子供を産み育てる大変さというのも、自分で経験して初めて分かりました。出産はまさに「鼻からスイカ」で、イキミながら「本当に出てくるのか??」と不安になったり、産まれて数ヶ月は24時間、数時間おきの授乳と寝かしつけ で「毎日心臓外科の当直をしているのと同じ!?」と思うほどで、「世の中のお母さんはみんなこんなことを乗り越えているのか!?」と思うと、尊敬の念を覚えます。出産や育児を「誰でもやっている、当たり前のこと」ぐらいに思っていた自分を深く反省しました。

また、子供をよくみていると「おもちゃで遊ぶ」「ごっこ遊びをする」「読み聞かせをする」など、子供の成長、社会性の獲得にとって、いろいろな刺激を与えるということが大事だということに気付きます。しかし、ふと病院の中をみて、特に長期間入院している子供たちは大丈夫だろうか?と思うと、足りないところがたくさんあります。病院の中で少しでも楽しく過ごしてもらい、入院していることで子供たちの「心の成長」を止めないような配慮ができればなぁと思い、「ホスピタルアートプロジェクト」というのを始めました。これも、育児を通して視野を広げることができたおかげだと思います。

自分の思考スキルの向上にも確実に寄与していると思います。「仕事」「家事」「育児」と常にマルチタスクをこなしている状態なので、いかに効率よく、並行して処理するかを常に考えながら行動するようになるため、仕事の中でマルチタスクをこなす時にも、それが活かされていると思います。

そして、子育ての大変さに気づく時「私もこうして育てられてきたのだなぁ…」と思うと、自分をここまで育ててくれた親への感謝とともに、医師として仕事をする社会的使命に気づかされます。

このように子育てを通してたくさんのことを気づき、視野を広げてもらっていますが、気づく機会を与えてくれた子供にとても感謝しています。

「育児は育自」—これからもいろんなことに悩み、試行錯誤しながら、子供と一緒に自分も成長していけたらなぁと思います。

立石実
東京女子医科大学 心臓血管外科
プロフィール
熊本大学医学部卒業。同年東京女子医科大学日本心臓血圧研究所心臓血管外科入局。中野佼成病院、聖隷浜松病院、富山県立中央病院、京都府立医科大学に出向。2009年~現職。専門医資格:心臓血管外科専門医、外科専門医、循環器専門医
著書
こどもの心臓病と手術