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逆境こそ宝

2012年8月3日

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今週は私にとってひとつのエポックとなる出来事がありました。最初の回でさわりだけお伝えしたと思いますが、7月30日に私が院長を務める新たなクリニック、「広尾レディース」を開院させていただきました。実は機器搬入、内装工事をオープン直前までやっていましてドタバタしており(苦笑)、今月いっぱいは通常の診察は行っていないのですが(各種検診が主です)、個人的に前々からやりたかったことを実現できるような院内にしたので、これからを本当に楽しみにしています。痛みのないデジタルマンモグラフィ機器や、胎児の3D/4Dカラーエコーなど備え、これからももっともっと女性に寄り添える、信頼していただけるに足る体制で診療を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。

そんなわけで、開院したばかりの我が広尾レディースでは優秀なスタッフさんを大募集中なのですが(笑)、それはそれ、当院の話は別としまして…いまもっとも医師を必要としている地域のひとつ、福島県南相馬市の医療施設でも、心ある、意気ある医療スタッフを求めています。特に南相馬市立総合病院の産婦人科は、今年4月に自治医大卒の安部先生が着任しましたが、他に支援医師が集まらず、週ぶっ通し、たった1人で切り盛りしています。そんな状況の中で阿部先生は、さらにこの地域の周産期医療の最後の砦として病をおして頑張っておられる、高橋亨平先生の原町中央産婦人科医院のお手伝いもされています。人手不足の度合いとしては絶望的なほどのレベルであり、この状態を続けられるわけがありません。阿部先生本人も「いつ重大事故が起きてもおかしくない」と悲痛な叫びを上げておられます。

確かに南相馬市へ赴くのは、根源的な恐怖をぬぐいされないかもしれません。震災直後はひどい風評被害で支援物資が届かず、市長がテレビ番組で必死に訴えていたのを見た方も多いと思います。しかし現在除染もある程度進み、市立総合病院周辺の放射線空間線量はまったく問題のない値とのことです。亀田総合病院、東大医科学研究所からの周辺サポートもありますが、やはり常勤医師がその地域の医療の屋台骨であることは間違いありません。そして、このような地域でもっとも活躍でき、また活躍すべきなのは、経験を必要とする若く情熱のある医師です。ご興味のある方、ぜひ以下をご覧になって、ご検討をお願いします。

http://www.city.minamisoma.lg.jp/sougoubyouin/sogohp/ishikoubobyoinsyokai.jsp

http://www.city.minamisoma.lg.jp/sougoubyouin/sogohp/ishibosyusyosai.jsp

なぜ私の医院のスタートと一緒にこのお話をご紹介したかというと、人は真剣に求めれば、必ずいるべき場所、やるべきことを見つけられるということです。偉そうなことを言うつもりは毛頭ないのですが、何事も本気でぶつからないと、得られるものも、実際本物ではないのです。南相馬へ行くことで確実にそのことを実感できると思いますし、もしかすると、いま日本で一番本気になれる場所なのかも知れません。そして、逆境に身を置き、本気で立ち向かうことのみが、人間を強くするのです。

宗田 聡
産婦人科医
プロフィール
茨城県出身。医師、医学博士。専門は、産婦人科医(周産期医療、出生前診断、胎児医学、遺伝医学、メンタルヘルス、医療倫理、プライマリケア、医療IT、女性医学)。日本産科婦人科学会認定医・指導医、臨床遺伝学認定医・指導医、認定産業医・スポーツ医、アメリカ人類遺伝学会(ACMG)上級会員(Fellow)
 母校の大学病院で講師として臨床医療・教育・研究に関わり、留学後に幅広い医療、特に女性の心とカラダの健康を総合的にサポートする医療を理想として、地域周産期センター長を歴任後、都内で都市型かかりつけ医のクリニックを開業。
 日英論文多数、専門書(翻訳)執筆にも定評があり、一般誌でも「Anecan」など様々な雑誌で女性の健康に関する記事を多数執筆。著書には、「産後ママの心と体をケアする本」「産後うつ病ガイドブック」「ニューイングランド周産期マニュアル第二版」など。