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思いさえ、あれば

2012年6月29日

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2011年3月11日からの数日間、皆さんはどんなことを考え、どう過ごされていましたか。

記憶が鮮明な方も多々いらっしゃると思います。この頃は原発事故の悪化、計画停電の実施、さらに新潟や静岡での大きな地震も連続して起き、震災の恐怖も覚めやらぬまま、列島全体が大きな、大きな不安に包まれていたと言っていいでしょう。

この国難とも言える危機に、心あるすべての人々が、職分を越えて被災地のためにできることを探し、見つけ、行動していました。もちろん医療従事者も、私たち薬剤師もそうでした。皆が、話したことも会ったこともない人たちが、お互い協力しあい、本当の意味でひとつの方向を向いて、目の前の問題に立ち向かっていた時期だったと思います。

私たちの災害支援も、純粋に「助けたい、お役に立ちたい」という一心が集まって始まったものですが、その端緒となるプロジェクトのきっかけは、本当にちょっとしたつぶやきからでした。2011年3月16日のことです。

薬剤師の災害ボランティアに行こうと思っているが何を用意すればよいか?と。自分の飲んでいる薬剤がわからない患者のために、シートの写真の一覧のようなものがあれば欲しいと言っているが。どなたか経験ある方いたらご教授ください。

 

これは、Facebookに投稿されたとある薬剤師さんのつぶやきです。避難や津波などで薬を失くしてしまった被災地の患者さんへ、いつも処方されていた薬を速やかにお渡しすることが当時、医療支援においての大きな課題の一つでした。患者さんご自身が薬名やパッケージなどを覚えていらっしゃれば問題はありませんが、むしろそんな方は稀。だいたいにおいて、名前がうろ覚えだったり、名前は分からないけれど何々色の錠剤だった、などそういう状態です。そんな状態から、正しく薬を思い出していただくにはどうしたらいいだろう、というつぶやきでした。

よく使われる薬を色味ごとにまとめた表とかどなたかお持ちではないですか?
「青い線の入った血圧の薬」「この中にありますか?」「あぁこれ。」「ノルバスクですね」っていう。
避難所用に。。。作るか??

最初のつぶやきから数時間後、このtwitterでの呼びかけからすべてが始まります。広島薬剤師会の方でした。10数分後には「服用薬確認シートプロジェクト」とプロジェクト名がつけられハッシュタグもつき、オンライン上の有志による、地域も時間も乗り越えた共同作業が、怒濤のように進み始めます。

 

 友人からの要望もあり協力します
ノボHPにインスリン一覧表ありました
喘息、鼻炎はありましたねメーカー製。精神科系もありそう

私にもできることあるかな
一緒にやりましょ!色々意見つぶやいてください!

カテゴリーで分けたデータというのは可能でしょうか?
 QLifeお薬検索で提供してます。レセプトを統計処理したデータを使ってます
おお!

じほうから、剤形画像データーの利用の了解とりました。じほうの方で公開できるよう作業をして下さるそうです
共同作成が可能なアプリケーションを急いで構成しました。使えそうでしたら是非使ってください

昼間被災地ボランティアにこれから行く友人に相談されたことが、もう形になりそう。みんなの力で展開早い

 

(※流れを分かりやすくするため、実際つぶやかれた順番ではないところがあります)

 

数分ごとに、時には2分と間をおかず飛び交うツィート。
3月16日深夜から始まったこのプロジェクトは、3月21日13:29に、オンライン上でのやりとりだけで、予定した13カテゴリすべてのシートの作成を終えました。(現在でもオンラインで公開されており、必要な方はご活用いただけます)http://goo.gl/O8P3c
このシートは、被災地へ支援に向かう薬剤師の皆さんへすぐに共有され、印刷、活用されることになりました。完成翌日、3月22日出発のボランティア隊の荷物の中にも入れられたと聞きます。プロジェクトは話題になり、こちらの記事にもなりました。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/di/trend/201103/519025.html

そして不肖の私もこのシートを手に、被災地支援に向かうことになるのです。

これは本当に特別なことではない、と私は思います。思いさえ共有できれば、ひとりひとりの、ひとつひとつの小さな協力でもすぐに繋がって、大きな力になるという好例です。ボランティアというのは特別な行為ではありません。もし協力したいというお気持ちがあれば、それを一番大切にしていただければと思います。

Photo by R0021752 / OKAMOTOAtusi

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。